『トラウマを消せる機械の話』でサブカル!

トラウマ忘却装置

 

 男が会社を辞めて1年が経った。


職場復帰の目処は立ってない。男はかつていた会社での出来事がトラウマとなり、精神の病に罹っていたからだ。慢性的な食欲不振、胃痛。男はみるみるうちに痩せ細っていく。


男は学生時代部活動に入り、ラガーマンとして活躍していたゆえに、心身共に体力には自信があった。こうした出来事は無縁だと考えていた。

しかし男は、1年も前に在籍していた会社での出来事がトラウマとなって動き出せないでいる。


それは常識を逸脱した出来事だったのだ。


男が勤めてから3年が過ぎ、仕事にも慣れた頃海外出張の話が舞い込んできた。

男は思春期と呼ばれる頃、アメリカに住んでいた。日本に戻ってからも語学の鍛錬を繰り返し、殆ど不自由なく英語を話せるのだった。男は自信を持って海外に渡った。


男の会社は家電製品のメーカーである。競合他社の家電が家庭でどのように使われているのか確認し、データを取ってくるのが仕事であった。

男は飛行機に乗り、アポイントを取れている家庭の情報資料を眺めていた。

客室乗務員が接近してくる。ドリンクのサービスだろう。

客室乗務員は男の横にドリンクのカートを付けて、何かを話した。男はその言葉が聞き取れなかった。

しかし、おそらく何を飲むか聞いているのだろうと判断し得意の発音でグリーンティーを頼んだ。客室乗務員は全く理解不能といった面持ちで何か話してきた。

男はしばし慌てて指でカートの上にある飲み物を指した。客室乗務員はそれをコップに入れて男の前に出し、去って行った。


何故だろうか。男はまるで言葉を聞き取れず、話しても通じない。しかしあれは何の言語なんだ。


長旅である。慌てていた男も眠気が来てそうした一切を忘れて眠りに落ちた。

 

『トラウマ忘却装置を使ってください』

 

男は、夢の中でそう話す白衣を着た者に応じて目の前にある機械のスイッチを押した。


男が目を覚ますと、そこは自宅の部屋のベッドの上だった。男は時間を見て慌てた。会社に間に合わない。しかし男は気づいた。

 

会社を1年前に辞めている。理由は確か、企業による整理解雇だった。


男は何故1年も働かずに過ごしていたのか疑問に思った。男は職業相談所に出掛けた。

 

ある研究室。白衣の男たちが話している。


「彼は無事、トラウマを忘れたらしいな。この装置の性能は確かなようだ」


「あの男は確か、国に着いた後も全く言語が分からずパニックになって倒れ、目を覚ましたら日本の病院のベッドの上。起きて上司が何かを聞いてくる。しかしそれはまた謎の言語。もちろん聞き取れない男は大暴れ。精神に病をきたしたということで期限付き休職からの退職だったな」

 

「中々面白いトラウマを作ったな。腕の良い脚本家に頼んだ甲斐があった」

 


「さて、まだまだ性能のチェックは欠かせない。次のターゲットを見つけるぞ。脚本は君が探しておいてくれ」