相席でサブカル!

えっマジか座ってきた...。

 
 
 
神保町の喫茶店で本を読んでいる時、目の前に還暦は超えているだろう背広を着た老紳士が目の前に座ってきた。
 
 
 
そう、相席というやつである。
 
 
 
瞬間、多少動揺したものの神保町は初めて故に俺はこう考えた。
 
 
 
『ああ、神保町の喫茶店ではこういう相席は当たり前なんだな。むしろ、ここからコミュニケーションが生まれるたりするのか。さすが神保町、粋だぜ!』
 
 
 
 
 
店員さんが席にやってきて老紳士に一言。
 
 
 
 
 
「申し訳有りませんが、あちらの席が空いているので移ってもらえませんか...」
 
 
 
 
 
 
俺の予想はしっかり外れた。神保町の喫茶店に相席文化など無かったのだ。
 
 
正直、この状況から老紳士と会話を盛り上げるバイタリティのない俺は安堵した。でも少しだけがっかりもしていた。
 
 
 
 
しかし、少しずつ頭が整理されてくると俺の考えは一つだった。
 
 
 
 
 
 
 
『なんやねん、おっさん!!相席とかこえーからやめろや!!』
 
 
 
 
 
 
 
ナオト・インティライミとかファンキー加藤なら老紳士と親友になってたんだろうなあ...
 
 
 
 
俺は妄想を始めた。相席してきたおじさんにこう言われるのだ。
 
 
 
「良い眼をしているな。私は若者に投資するのが趣味なんだ。月に1000万出そう。うちの会社に来ないか?」
 
 
 
 
唐突な、目がくらむほどの美味しい話に猜疑心を抱きつつも、高揚する心の動きに耐えられず、最初に出され手をつけなかった水を一気に飲み干す俺。
 
 
 
おじさんは慌てふためく俺を微笑みながら見ている。
 
 
 
 
そんなドラマチックなことが起きているテーブルをよそに、遠く離れた南米ブラジルでは今日も新しい命が生まれている。
 
 
 
はたまた渋谷109では、そろそろ私もギャル辞めようかなと考える32歳のショップ店員がいるかもしれない。
 
 
 
 
そして小学5年生の女の子はスマホが欲しいと親にねだり、親は少しばかり早いスマホの催促に狼狽しているかもしれない。
 
 
 
 
そう、世界は今もとめどなく動いている。
 
 
 
俺が急におっさんから超高給の仕事を斡旋されようが、この世界は動いているんだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ふと我に帰ると、さっき相席して店員に移動させられた老紳士が会計を済ませているところだった。