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『トイレのドアを開けたらそこは大草原』でサブカル!

村人の夢

 

 


男はトイレにいる。


毎朝、決まった時間に朝食を食べ、決まった時間にトイレに入るのだ。そのルーティンをこなして会社に行く。

しかしそのルーティンに変化が訪れた。

トイレから出ることにした男はドアを開ける。すると、そこは見覚えのない光景であった。


いつもの部屋の間取りと明らかに違う。ここは一体何処なんだ。出て左にシャワールームがあるはずなのに、左には大きな玄関へと続く廊下がある。

男は当然のように混乱し、パニックに陥った。すると後ろから声がした。


「どちら様ですか?ご予約の方でしたらお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」


女将と呼ぶのが一番相応しいだろう身なりの女性がそう尋ねる。どうやらここは旅館らしい。


自分の部屋のトイレに入り、ドアを開けたら何処かの旅館に来てしまったわけだ。まったく理解できない現象だ。

にもかかわらず、男は思いの外冷静に答えた。

「いえ、トイレだけ借りさせてもらいました。失礼しました」

男は足早に玄関の扉を開けた。すると、そこは自宅のトイレだった。


「おいおい。どうなってやがる。今のはなんだったんだ。それよりもやばいぞ。仕事に遅れちまう」

男は腕時計を確認した。しかし、時間は男がトイレから出ようとした時とほぼ同じだった。

「時間が経ってないのか...。ああそうか、きっと俺はトイレの中で寝ていたのかもしれない。ああそうだ。きっとそうに違いない」

そんなわけはないと理解しながらも、男は自身を落ち着かせるため、そう言い聞かせた。


男は再びトイレのドアを開けた。するとそこは大草原であった。


勘弁してくれよ。どうなってるんだ。男の頭の中は大混乱である。


草原を彷徨い歩く。どこかにトイレに戻る出口があるはずだ。次第に村が見えてきた。疲れた男は村に着くと、倒れこんだ。


「俺は今トイレの中にいるのか、それとも外にいるのか。どっちなんだ」


「何を言ってらっしゃるの。ここはトイレではないわ。小さな農村よ。あなたは旅人さんのようね。とても疲れているみたいだわ。私の家に泊まっていきなさい」


突然そう声をかけてきた女性はとても美しく、男は一目惚れしてしまった。それからというものの男はここが何処なのかなどどうでもよくなり、村での生活に馴染んでいった。


男手が不足していたこの村において、男の働きぶりはとても助かるものだった。

次第に男が一目惚れした女性との仲が発展し、結ばれた。そして子供が3人でき、一家の大黒柱として今日も畑仕事をしていた時のことだ。


男は目の前に黒い渦のようなものがあることに気付いた。

男は怖いもの見たさでその渦に手を触れてみた。

すると、一瞬で吸い込まれ自宅のトイレに戻ってきた。

気付いたら便座に座っていたのだ。


何年ぶりの帰還だろう。もはや男にとっては村での生活がメインになっていた。家族ともう会えないということを考えると涙が止まらなかった。


男は時間を確認した。しかし、こっちに来る前の時間など覚えていない。その行為は無意味だったのだ。


男はトイレのドアを開けるのが怖くなった。次何処に連れて行かれるかまるで分からないからだ。

突然、トイレの外でばたばたと騒がしい足音が聞こえた。どうやらこちらに向かっているらしい。足音が止んだと同時にドアの外から激しいノックが始まった。

「ここにいるんでしょ、開けなさい。どうして...。なんでなの...」

「お母さん、落ち着いてください。もう随分と時間が経っています。残念ながら息子さんは生きておられないでしょう。ドアを壊しますので、下がっていてください」


男はドアの外の会話を聞き、何やら大変なことになっていることに気付いた。あれは間違いなく母の声だ。とりあえずドアを壊されそうだ、開けなくてわ。

男はそう考えドアノブに手をかけた。しかし瞬間、男の頭に一つの考えがよぎる。

「待て。今までは自分で開けて見当違いな所に行く羽目になった。向こう側から開けてもらえば自宅に戻れるのではないか」


「えっ...。声がするわ。生きてるのね...。生きてるんでしょう...」


「ああ生きてるよ。鍵を外したからドアを開けてくれ母さん」

母は言う通りにドアを開けた。男は開かれたドアの向こうに母と、おそらく役所の者であろう男がいるのが見えた。


どうやら自宅と繋がったらしい。


二人の顔は少しばかり、有り得ない状況を見た恐怖のようなものに包まれていた。


男はリビングの方に歩いて行き、机の上に置いてあった携帯電話を開いた。


20XX年。男は2年経っていたことに気付いた。


男は家族と殆ど口を聞いていないような関係であったのだ。半ば強引に家を出た男は一人暮らしを始めたが、唯一仲の良かった母とだけは連絡を取り合っていた。


しかし、その連絡が急に途絶え母はとても心配した。

男はヨーロッパに住んでいた。そう簡単に来れる距離ではない。


母は元気でやっているだろうと信じていたが、やはり心配になりヨーロッパにある男の家まで来たのだ。

しかし、カレンダーが2年前ということ。机の上にある携帯電話がかなり古いモデルであったこと。また、トイレのドアが閉まっていたことから男が自宅のトイレにずっと閉じ込められていたのではないかと推測したのだ。


ほとぼりが冷めたある日の朝、男は会社に行く途中黒い渦に吸い込まれた。

 

 


気付いたら畑の上にいた。

 

 


どうやら男は眠っていたらしい。

 

 

随分と長い夢を見たな。家には妻と子供たちが待っている。

 


今日はもう帰ろう。

『押すだけでストレスが解消されるボタンの話』でサブカル!

ストレス解消ボタン

 

 

男はストレスが溜まっていた。


齢は30後半。上役と若手の板挟み、いわゆる中間管理職のような立場にいた。

上役からは無理難題を押し付けられ、若手からは現場の文句を受け付ける。

男は非常にストレスが溜まっていたのだ。


ある夜、仕事帰りに馴染みの居酒屋に寄った。常連ゆえに話しが弾む店主に自身の置かれている状況を話してみた。

「そうかい、それはストレスが溜まるだろうね。そういや昨日少し変わったお客さんが来てね。あれはまだ20代だろう。彼はこれまた変わった研究をしているらしいんだ。名刺を貰ったから、息抜きに見学でもしてきたらどうだい」


店主も変なことを言う。その変わった研究の社会科見学が息抜きになるとでも言うのか。まるで腑に落ちない。しかし、男はそうした巡り合わせを無下にしない性分であった。


次の休日、男は店主から貰った名刺に連絡してみた。柔らかい声音の女性が出た。研究を見学したいと話したら驚くほどすんなりと承諾された。
男は支度をして少しばかり離れた研究所へ出掛けた。研究所に着くと、門の所に青年がいるのが見えた。門の前まで来ると、青年は破顔して笑みをこぼし、見学の方ですかと問いかける。


男は研究所を1時間かけて周った。最後の一室で、その青年研究員の顔に少しばかりこわばりが見られた。


「ここが最後の部屋になります。ここにはまだ世に出ていない製品が置いてあります。せっかくの機会なので触れて確かめてみてください」


青年研究員は片手に収まる、四角い画面の端末を渡してきた。非常にスタイリッシュなデザインで、新型のスマートフォンかと見紛う。

「こちらの端末にはある機能が備え付けられていまして...。実は、この端末でストレスをなくすことが出来るのです。操作は簡単、現在画面に表示されているボタンを押すだけ。すると、たちまち体内に蓄積されたストレスが消えてなくなるのです。どうですか?試してみますか」


研究所を出た男のポケットには、ストレスを消せる端末が入っている。


月曜日、夕方の会議において上役から現場の若手の不手際を指摘され、叱責をくらった。何で俺が怒られなきゃならないんだ。男のストレスは限界に来て、爆発寸前であった。


男はポケットの中でストレス解消ボタンを押してみた。


すると、たちまち男の思考がクリアになり、激昂した感情は何処かに消え去り、とても清々しい気分になった。

男は冷静に謝り、現場の状況と今後の改善策を理路整然と上役に提案出来た。

男はそれから、ストレスを感じる度に解消ボタンを押すようになった。今まで、ストレス解消の為に通っていたスポーツジムも退会した。禁煙にすら成功した。男にはこの端末一つで事足りるのだ。

仕事以外でも夫婦喧嘩でイライラした時、道端でガムを踏んだ時でさえ解消ボタンを押すようになった。男はありとあらゆる生活の中の憤りをボタン一つでなかったことにした。


男はこの端末をくれた青年研究員に使い心地を逐一メールで知らせた。それがタダで使う為のルールだったからだ。

ある日研究所から電話が入った。青年研究員は電話口でこう話す。


「使い過ぎです。サーバーがパンクしそうだ。ホストコンピューターが機能不全になれば、大変なことになりますよ。ちょっとしたことでは使わないでください」


男はそれからなるべく些細なことでは使わないように努めた。しかし、今までは何でも解除ボタンにストレス解消を任せていた為、少しのことでもイライラしてしまうようになった。

男は我慢出来ず、また些細なことにもボタンを使うようになってしまった。こんなに素晴らしい端末を作れるんだ、そうそう壊れることなんてないだろう。別に死ぬわけじゃあるまいし。


ある日、青年研究員から電話があった。

「サーバーがパンクしました。ホストコンピューターも故障しています。私は警告しました。契約書類の通り、こちらで責任を取ることは出来ません。申し訳ありませんが手遅れです。コンピューターが火を噴きそうなので主電源を切らせていただきます」


10秒ほど経つと、男は全身が硬直した。全く身体が動かない。頭の中に今まで感じたストレスシーンが連続的に流れ出した。物凄い激痛。頭を抑え蹲るもすでに遅し。男はそのまま死んだ。
顔は抜け殻のように生気を失っていた。


その頃、研究所では青年と投資家が話していた。

「失敗に終わったようだね。原因は一体何だったんだ」


「申し訳ございません。男がストレス解消ボタンを押す度に、そのストレスがこちらのホストコンピューターに蓄積されていきます。よって今回は蓄積された男の今までの全ストレスが逆流したというのが正しいかと」


「なるほど、まだ改善の余地はありそうだ。あの居酒屋の店主は顔が広い。新たなストレス患者を教えてもらおう。とりあえずこれを持って店主の所に行ってきなさい」

 

青年研究員は100万を持って居酒屋に向かった。

『モチベーションが跳ね上がるサンダルの話』でサブカル!

魂のサンダル

 

 

女はサンダルを3週に渡って探していた。


とはいえ、季節は真夏の直前。今から買っても遅くはない。女が求めるサンダルは限定1000個のサンダルであり、さして栄えていない地元の街にはあるはずがなかった。


女は3週に渡って休日に都会に繰り出したが、どうも見つからない。それもそうだ、このサンダルは世の中に1000個しかなく更に特徴がある。
それは履いた者のあらゆるやる気を跳ね上げてくれるというものだ。


それは巷では魂のサンダルと呼ばれている。


ネットでは既に手に入れ、それを履いた者のレビューや噂が飛び交っていた。

やる気が出て、休日の朝に3時間もランニングをした者。やる気が出て、一週間で語学を習得した者。やる気が出て、平社員から会社の社長に就任した者。最早これは嘘だろうと思われる噂が飛び交っていたのだ。
テレビのニュースでもその現象が特集されていた。


女はこのサンダルがどうしても欲しかった。
女は何もかも先延ばしにする癖があったのだ。学生の頃からテストにおいても前日になるまで勉強のやる気が起きない。就職活動もやる気が起きず、親戚の会社にコネで入ったぐらいだ。

女には何かを計画的に頑張るという力が不足していた。しかし、今まではそれで辛酸を舐めたことはなかった。


だが、最近社内が英語を公用化し始めたのだ。遂に女にピンチが訪れた。

英語などからきし出来ないため、今や閑職に追いやられそうなのである。それなのに女は英語を学ぶやる気が起きない。これは女の先天的な性格的特徴なのだろう。


しかし、このままでは会社をクビになってしまう。たいした資格もない女に次の仕事のあてはなかった。女は英語を身につける為に魂のサンダルを探していたのだ。


ある日、その瞬間は訪れた。何気なく見ていたフリマアプリに魂のサンダルが10万円で売られていたのだ。

さすがに10万じゃ、このオカルト的なサンダルを買う者は中々出てこない。しかし、女は違った。大枚をはたいて魂のサンダルを購入したのだ。

後日届いたサンダルは、見る分にはただの黒く特別感のないものであった。それはどこかスポーツサンダルに近い。

女はビジネスカジュアルにそぐわないことを承知で、そのサンダルを毎日履き続けた。


一週間後、女は社内において、英語で日常会話を流暢にこなすことに成功していた。


一ヶ月が経つとビジネスにおける英語も板に付き、閑職からは程遠いエリート部門に配属されるようになったのだ。女は今やバリバリのキャリアウーマンである。


季節が変わろうが女はサンダルを履き続けていた。サンダルがなければ、この地位から転落してしまう。私がこの地位にいるのはサンダルのおかげであると考えていた女は、家にいる時もサンダルの裏を拭いて履いていた。


一年が経つと、女は海外を股にかけ仕事をする国際的なキャリアウーマンとなっていた。『サンダルのビジネスウーマン』と各国の新聞で掲載された程だ。女はとても有名になった。


何もかもが上手くいき、女はやる気に満ちていた。仕事から帰れば勉強をする。朝はランニングをしてから出社。女は理想の生活習慣を身に付けていた。


サンダルを買って、2年が経った頃女は帰り道、側溝に足を掛けて転んでしまった。

サンダルの皮が大きく剥がれた。いくら修繕しても元には戻りそうになかった。


女は遂にサンダルを失ってしまったのだ。


女は仕方なく、季節とシーンに合った靴を履くようになった。


それから3年後、女は政治家として外交的な仕事を精力的に続けていた。

 


女にはもうサンダルは必要なかったようだ。

『トラウマを消せる機械の話』でサブカル!

トラウマ忘却装置

 

 男が会社を辞めて1年が経った。


職場復帰の目処は立ってない。男はかつていた会社での出来事がトラウマとなり、精神の病に罹っていたからだ。慢性的な食欲不振、胃痛。男はみるみるうちに痩せ細っていく。


男は学生時代部活動に入り、ラガーマンとして活躍していたゆえに、心身共に体力には自信があった。こうした出来事は無縁だと考えていた。

しかし男は、1年も前に在籍していた会社での出来事がトラウマとなって動き出せないでいる。


それは常識を逸脱した出来事だったのだ。


男が勤めてから3年が過ぎ、仕事にも慣れた頃海外出張の話が舞い込んできた。

男は思春期と呼ばれる頃、アメリカに住んでいた。日本に戻ってからも語学の鍛錬を繰り返し、殆ど不自由なく英語を話せるのだった。男は自信を持って海外に渡った。


男の会社は家電製品のメーカーである。競合他社の家電が家庭でどのように使われているのか確認し、データを取ってくるのが仕事であった。

男は飛行機に乗り、アポイントを取れている家庭の情報資料を眺めていた。

客室乗務員が接近してくる。ドリンクのサービスだろう。

客室乗務員は男の横にドリンクのカートを付けて、何かを話した。男はその言葉が聞き取れなかった。

しかし、おそらく何を飲むか聞いているのだろうと判断し得意の発音でグリーンティーを頼んだ。客室乗務員は全く理解不能といった面持ちで何か話してきた。

男はしばし慌てて指でカートの上にある飲み物を指した。客室乗務員はそれをコップに入れて男の前に出し、去って行った。


何故だろうか。男はまるで言葉を聞き取れず、話しても通じない。しかしあれは何の言語なんだ。


長旅である。慌てていた男も眠気が来てそうした一切を忘れて眠りに落ちた。

 

『トラウマ忘却装置を使ってください』

 

男は、夢の中でそう話す白衣を着た者に応じて目の前にある機械のスイッチを押した。


男が目を覚ますと、そこは自宅の部屋のベッドの上だった。男は時間を見て慌てた。会社に間に合わない。しかし男は気づいた。

 

会社を1年前に辞めている。理由は確か、企業による整理解雇だった。


男は何故1年も働かずに過ごしていたのか疑問に思った。男は職業相談所に出掛けた。

 

ある研究室。白衣の男たちが話している。


「彼は無事、トラウマを忘れたらしいな。この装置の性能は確かなようだ」


「あの男は確か、国に着いた後も全く言語が分からずパニックになって倒れ、目を覚ましたら日本の病院のベッドの上。起きて上司が何かを聞いてくる。しかしそれはまた謎の言語。もちろん聞き取れない男は大暴れ。精神に病をきたしたということで期限付き休職からの退職だったな」

 

「中々面白いトラウマを作ったな。腕の良い脚本家に頼んだ甲斐があった」

 


「さて、まだまだ性能のチェックは欠かせない。次のターゲットを見つけるぞ。脚本は君が探しておいてくれ」

『お金が減らない財布の話』でサブカル!

無限財布

 

 

男は勤め人である。

 

昼休憩、いつもと同じように近くの喫茶店でランチを食べた。会計の時、馴染みの店主に今日のオムライスも絶品だった旨を伝え、財布から千円札を出した。

 

確認した財布の中身は、ざっと見るに千円札が9枚はあるように見えた。男は財布の中身において札が一枚も無くなった時のみ、銀行から金を引き出す。しかしまだ余裕がある。

 

翌日、翌々日も冒険心のない男はいつもの喫茶店でランチを食べていた。会計の時、財布を見るにまだまだ札の数には余裕があるように見えた。店主と二、三会話を交わして店を後にする。

 

彼がこの喫茶店でよく食べるのはオムライスかカレーライスだ。どちらも680円である。

男は小銭の余裕があっても、千円札を一枚出す癖があった。5日間の昼休憩で千円札は5枚財布から消え、小銭のポケットには硬貨が溜まるはずだ。しかし、男の財布は、ざっと見るに9枚は千円札があるように見えた。

 

男は実家暮らしの青年であることから、少しばかり金銭の管理には無頓着な節がある。その為、男が財布の違和感に気付いたのは5日間の昼休憩を繰り返した土曜日のことだった。

 

男は休日には少しばかり洒落たアンティーク雑貨に囲まれたカフェで読書をする習慣があった。そのアンティーク雑貨は店主が外国から仕入れてきたものだ。ゆえに販売もしている。

 

男はたまに気に入った雑貨を買うことがあった。目についたのは、一見ガラクタと見紛うようなロボットの道化であった。男は店主に値段を聞いた。1200円。

男は実家暮らしゆえに金の余裕があり、こうした些細な道楽的支出を繰り返すことが多い。男は財布を取り出し、中身を見た。そこには、札がざっと見るに9枚はあった。男はまだ余裕があると思うだけではなかった。

やっと、自身の財布に起きた奇妙な現象に気付いたのだ。財布から札が減らない。男は狼狽し、ガラクタの道化を買うのを辞した。席に座り、本を再度開くも文字は理解の壁を超えることはない。男は平然を装い、読書をしている体裁を保ちながら心の中で狼狽えていた。

 

男の財布はいつからか金が減らなくなったらしい。男はその夜一睡も出来なかった。

しかし、それから1ヶ月が経つ頃男の様子は様変わりしていた。会社を辞めたのだ。

 

男は毎日を自由に過ごした。馴染みのバーではチップを存分に出し、夜の遊びも増えた。

 

男は自身の財布を無限財布と名付けた。

 

この財布には特徴がある。ざっと見るに9枚は千円札がありそうだが、札を数えようとすると途中から頭の中が混乱して数えられなくなるのだ。ゆえに財布の中にはいくら入ってるか分からない。

 

しかし、ざっと見るに9枚しかない為、それを超える買い物は躊躇われた。しかし、男はそれで良かった。男は大きな買い物に興味がなかったのだ。ちまちまと9枚以内に収まりそうな散財をしているだけでも、満たされた。

 

男は少しばかり歳をとった。結婚や子供を持つ友人が増えた。次第に男は自分も結婚をして家庭を持ちたいと思うようになった。しかし、男は仕事をしていない。無職の男は女性に振り向いてはもらえなかった。

 

男は次第に財布を憎むようになった。この財布さえなければ、仕事を辞めることもせず、今頃は少しは出世して家庭を持てたかもしれないのに。男は財布の力に依存して自由な日々を過ごした結果、歳を増すことによって出てくる新たな欲に対応することが出来なかった。

 

男はこの奇妙な財布のことを誰にも言うことは出来なかった。男はついに無限財布を捨てることにした。

 

男は中々雇われず、馴染みのバーで手伝いをすることにした。バーの店主とは自然と何でも話し合える仲となった。バーテンという職業がそうさせているのか、彼の人柄ゆえなのかは分からない。

 

男は店主に奇妙な財布の話を打ち明けた。すると店主はポケットから見覚えのある財布を取り出した。それは紛れもなく男が捨てた無限財布であった。

 

店主はこの財布を拾い、男同様その魔力に取り憑かれ仕事を辞そうと考えたいたらしい。男は慌ててそれを阻止しようとした。おそらく店主も男の様に、痛い目を見るに違いないと思ったからだ。

しかし店主は結婚をして子供もいた。そして妻も無限財布の存在を許容したらしい。店主は男とは違っていた。

 

店をたたむ日、店主は男がかつて無限財布から払っていたチップを全て、男に返した。男は多くの千円札を抱え職を失った。

 

男は実家を出て、初めて金銭について真面目に考えた。

 

20年後、男は職を持ち家庭の為に堅実に働いていた頃、ある知らせを聞いた。

 

 

 

 

どうやら店主は病で死んだらしい。

 

 

 

 

 

 

 

店主の家庭には無限財布だけが残ったようだ。

 

 

『noteはじめたよ』でサブカル!

新進気鋭の自称クリエイターとして活動してるから暇だったら見てね。(現在フォロワー2)

https://note.mu/roofeehim

 

 

 

『雑多な話』でサブカル!

とりわけ書くことも、関心事もないけれど何かしら文章を書いてブログを更新したいと思う。

 

 

外では雷と間違うような花火の音が短い間隔で鳴り続けている。近くで花火大会が開かれているらしい。そういえば電車の中で浴衣を着た人たちをよく目にした。

 

 

現在恋人はいないが、もしもいたら二人で花火大会に行けたかもしれない。

 

 

思い返せば浴衣デートなるものをしたことがない。これは割と損をしているかもしれない。若いうちに、そうしたデートをしておきたいと思う。

 

 

そういえば、今年の夏は花火を一度も観ていない。しかし、手持ち花火なら馴染みの友人たちとすることが出来た。

 

 

夏らしいことは他にやっただろうか。

 

 

夏といえば花火が一番に想起される。次は海だろうか。後は何だ。かき氷とかか。プールもあるな。

 

 

海にも行かなかった。俺は毎年海に行かない。今年こそは行ってもいいのだろうが、どうも台風が来たりと天候は荒れている。タイミングが来ないまま夏が終わりそうだ。

 

 

とはいえ、そこまで海に行きたいとも思わないのかもしれない。ヒョロい貧弱な身体を晒しても仕方ないだろう。筋骨隆々な男を見ては、彼らのように逞しくなりたいと思うだけだ。

 

 

夏は終わりかけている。最近は、特に昨日今日は割と涼しかった。過ごしやすい気温は虚弱な肉体には助かる。

 

 

話は変わるが、どこか外国に行きたい。北欧とかに行けたら楽しそうだ。

 

北欧といえば、雑貨だろうか。北欧雑貨というのはとても魅力的だ。

しかし、ヴィレバンに売っている誰が買うのか見当もつかないようなマグカップの方が欲しいと思う。取っ手が動物の顔になっているマグカップがあったが、あれは持ちづらいだろうな。

 

 

外国は未だ2カ国しか行ったことがない。もっと色々な国に行ってみたいとは思う。

 

英語はろくに喋れない。どうも英語がペラペラの自分は想像出来ない。そういうものだろうか。

 

 

最近、韓国の映画を観た。寝て目覚める度に容姿が変わってしまう男の話だ。ラブストーリーである。その男は朝目覚めると、人種、性別などの限定はなく姿形が変化してしまうのだ。

 

そんな男が恋愛をするのだが、これがどうもスムーズには行かない。

 

相手側の精神状態が悪化してしまうのだ。

 

まあ確かに、毎日姿の違う人と付き合っていたらまともじゃいられないのも頷ける。

 

 

とても斬新な設定に興味をそそられ観てみたのだ。

 

 

 

最近『書く』意欲が湧かない。といいつつも日記は欠かさず書いているのだけれど。

 

 

ブログに関してもコンスタントに書くことがアクセス数アップに繋がるという節が見受けられるので、このように何かしら書いてしまう。

 

 

しかし、何か書きたいものがあれば書けばいいだけのことで、どうでもいいことをコンスタントに書いてもしゃーないのだ。

 

 

 

今後は、ゆるく更新したい時にしようと思う。

 

 

とはいいつつも、何かしら書きたくなったからこの記事を書いたのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

『書く』意欲はあるらしい。

 

 

 

 

全く関係ないが、

 

 

『あのころ自分はずいぶん年をとっていた。今はもっと若い。』

 

 

というボブ・ディランの言葉を30代で言えたらいいと思っている。